第6話 指だけで、私は何度も壊された

指だけで、私は何度も壊された

「奥まで、届くんですよ。指って――思ってる以上に」

そんなふうに囁かれたのは、
施術が始まって、たぶん15分ほど経った頃だった。

彼の指は、まるで言葉を持っているみたいだった。
強く押すでもなく、ただ撫でるのでもない。
どこかを確かめるように、
ゆっくり、静かに――でも、確実に、私の深いところを見抜いてくる。

 

足元から始まったマッサージ。
オイルが温かくて、最初はそれだけで安心できた。

でも、彼の手が足首から膝、
そして内ももへと移っていく頃には、
私の身体はもう、さっきまでの私じゃなくなっていた。

「ここ、すごく敏感ですね」
「ちゃんと触れてほしい場所、って感じがします」

彼はそんなふうに、やさしい声で語りかけながら、
指先をほんのわずかに立てて、
太ももの奥を撫でる。

その動きは、意地悪なほどゆっくりで、
なぜか――呼吸のリズムまで狂わされる。

 

服の上からなのに、
まるで素肌をなぞられているようだった。

ひとつひとつの動きが、
まるで“確認作業”のようで、
自分の中に眠っていたものを掘り起こされているような感覚。

羞恥心と、快感と、戸惑いが混ざり合って、
私はただ、ベッドの上でまぶたを閉じるしかなかった。

 

指は、首筋にも触れた。
耳の後ろをなぞるその感触に、
ゾクリと小さな痺れが走る。

「首まわり、すごく反応してますね。
 …もしかして、言われるの、弱いですか?」

その一言が、皮膚より先に、感情を突いた。
まるで、奥の奥まで触れられたような感覚。
言葉も、指と同じように、女をほどいていく。

彼の指は、やがて胸元のタオルの端を、そっと直すふりをして撫でた。
ほんの少しだけ肌に触れた、親指の腹。
それだけで、身体の奥から微かな熱が立ちのぼった。

 

「指だけで、こんなに……震えてる」

そんな彼のつぶやきに、
私は何も言えず、ただ息を吸い込んだ。

触れられているのは、ほんのわずか。
なのに、奥の奥で波紋が広がっていく。

まるで、
自分でも気づかない場所を探り当てられてしまったようだった。

 

彼の指が止まるたびに、逆に疼く。
触れられない“間”が、もっとも官能的に思えてくる。
そして、またそっと動き出すと、
その再会のたびに、心が大きく揺れる。

――ねぇ、いっそ触れ続けていて。

そう願ってしまうのに、
彼の手は、絶妙なところで止まる。
まるで、私の欲を見透かしているかのように。

 

「指って、すごいですよね。
 ちゃんと心の奥にも届くんですから」

彼が最後にそう囁いたとき、
私はベッドの上で、汗ばむ手を静かに握りしめていた。

キスもない。
抱き合ってもいない。

でも、確かに私は、
彼の“指”だけで、
何度も、自分のなかの何かを壊されていた。

そしてそれは――
気持ちよかった