「奥まで、届くんですよ。指って――思ってる以上に」
そんなふうに囁かれたのは、
施術が始まって、たぶん15分ほど経った頃だった。
彼の指は、まるで言葉を持っているみたいだった。
強く押すでもなく、ただ撫でるのでもない。
どこかを確かめるように、
ゆっくり、静かに――でも、確実に、私の深いところを見抜いてくる。
足元から始まったマッサージ。
オイルが温かくて、最初はそれだけで安心できた。
でも、彼の手が足首から膝、
そして内ももへと移っていく頃には、
私の身体はもう、さっきまでの私じゃなくなっていた。
「ここ、すごく敏感ですね」
「ちゃんと触れてほしい場所、って感じがします」
彼はそんなふうに、やさしい声で語りかけながら、
指先をほんのわずかに立てて、
太ももの奥を撫でる。
その動きは、意地悪なほどゆっくりで、
なぜか――呼吸のリズムまで狂わされる。
服の上からなのに、
まるで素肌をなぞられているようだった。
ひとつひとつの動きが、
まるで“確認作業”のようで、
自分の中に眠っていたものを掘り起こされているような感覚。
羞恥心と、快感と、戸惑いが混ざり合って、
私はただ、ベッドの上でまぶたを閉じるしかなかった。
指は、首筋にも触れた。
耳の後ろをなぞるその感触に、
ゾクリと小さな痺れが走る。
「首まわり、すごく反応してますね。
…もしかして、言われるの、弱いですか?」
その一言が、皮膚より先に、感情を突いた。
まるで、奥の奥まで触れられたような感覚。
言葉も、指と同じように、女をほどいていく。
彼の指は、やがて胸元のタオルの端を、そっと直すふりをして撫でた。
ほんの少しだけ肌に触れた、親指の腹。
それだけで、身体の奥から微かな熱が立ちのぼった。
「指だけで、こんなに……震えてる」
そんな彼のつぶやきに、
私は何も言えず、ただ息を吸い込んだ。
触れられているのは、ほんのわずか。
なのに、奥の奥で波紋が広がっていく。
まるで、
自分でも気づかない場所を探り当てられてしまったようだった。
彼の指が止まるたびに、逆に疼く。
触れられない“間”が、もっとも官能的に思えてくる。
そして、またそっと動き出すと、
その再会のたびに、心が大きく揺れる。
――ねぇ、いっそ触れ続けていて。
そう願ってしまうのに、
彼の手は、絶妙なところで止まる。
まるで、私の欲を見透かしているかのように。
「指って、すごいですよね。
ちゃんと心の奥にも届くんですから」
彼が最後にそう囁いたとき、
私はベッドの上で、汗ばむ手を静かに握りしめていた。
キスもない。
抱き合ってもいない。
でも、確かに私は、
彼の“指”だけで、
何度も、自分のなかの何かを壊されていた。
そしてそれは――
気持ちよかった
