午後3時。
空は泣きじゃくるような雨に濡れていた。
会議帰り、駅へ急ぐ足はヒールの音もかき消され、
細身のスーツの中まで、じわりと湿っている。
誰にも触れられたくない日だった。
けれど――誰かに触れてほしいとも思っていた。
会社では完璧でいる。
笑顔も、立ち居振る舞いも、目線ひとつまでも。
けれどそんな「完璧な女」が、雨に打たれて滲んでいくとき、
本当の私は――ただ、女でいたいだけだったと気づいた。
「本日は“オイル&ボディケアコース”で承っております。
服はそのままで結構ですので、こちらにおかけくださいね」
やさしい声。
でも、目が合った瞬間、彼の眼差しに一瞬で本能がざわついた。
大きな傘とタオルを差し出され、ソファに腰を下ろすと、
スーツのジャケットが湿った音を立てて肌に貼りついた。
「体、冷えてますね」
手が、そっと肩に触れた。
一瞬の接触。それなのに――
まるで肌の奥、心の中まで覗かれてしまったような気がした。
「ここ、凝ってるな……力、抜いてくださいね」
彼の手が、濡れたブラウスの上から肩を揉む。
押す、引く、なぞる。
力の加減が絶妙すぎて、ため息が漏れた。
指先の動きに合わせて、下腹部がじわじわと熱を帯びる。
次第に手は、肩から首、そして背中へと滑っていく。
濡れたブラウス越しに伝わる彼の体温。
その温かさが、気づかないうちに私を溶かしていた。
「濡れたままだと風邪ひきますよ」
そう言われたときには、彼の指がブラウスのボタンにかかっていた。
断る理由が、見つからなかった。
いや――きっと、欲しかったのは「理由」じゃない。
許されたいだけだった、自分の欲に。
ブラウスを脱がされ、下着姿になった身体に、
温かいオイルがそっと落とされた。
「冷えた肌には、ゆっくり温めてあげるのが一番です」
腰に、背中に、太ももに。
彼の手はまるで熟練の魔術師のように、
私の緊張と自制を、なめらかに解きほぐしていく。
「……そこ、ダメ」
腰を撫でられた瞬間、無意識に脚を閉じる。
でも彼は、焦らない。
そっと指先で脚の付け根をなぞりながら、
「大丈夫、ゆっくりでいいですから」と囁いた。
それが、余計に心をほどいてしまう。
指先が、ショーツの上から撫でたとき、
カラダはもう、ビクンと跳ねた。
あぁ、ダメ。
そこに触れられたら、戻れなくなる。
でも、その“戻れなさ”を、
私はどこかで望んでいたのだ。
ショーツの布越しに、指がリズムを刻む。
濡れているのは雨のせいじゃない。
自分でもわかっていた。
彼の指が、そっと中へと滑り込んだ瞬間、
部屋の中で、雨音よりも濃く熱い“音”が響いた。
「まだ我慢しますか?」
耳元で囁かれ、首をすくめた。
でも、その言葉に、頷いてしまう。
もう…どうでもよかった。
強がりも、正義感も、理性さえも。
私はただ、“欲望に正直な女”になりたかった。
雨に濡れて、全身に染み込んだ渇望を――
この男に、全部、掻き出してほしかった。
彼が覆いかぶさると、
胸が、唇が、脚が、
もう他人のものではいられなくなる。
突き上げるたびに、理性が遠のき、
熱の波が全身を飲み込んでいく。
あの日の雨は、
ただ濡れた肌を癒しただけじゃない。
私の奥に、忘れていた「オンナの本能」を、
確かに呼び起こしてしまったのだ。
