彼氏と別れた夜、予約してしまった

『キスだけして』が叶わなかった夜

「……そっか。じゃあ、元気でね」

最後のLINEを見届けたあと、私はワインを一気に飲み干した。
泣かなかった。たぶん、もう泣くほど好きじゃなかったのかもしれない。
でも、それでも、**“誰かに必要とされたい”**気持ちだけは、しっかり残っていた。

“もう、抱きしめてくれる人はいないの?”

そんな孤独を払うように、私はスマホの画面を開いて、
女性用風俗・セラピスト出張サービスの予約を入れた。

「今夜、空いてますか?」
この一文を送ったときの私は、
どこか、少しだけ大胆で、わざと“女”でいたくなった。

 

1時間後。
呼んだのは、レンタルスペースのデザイナーズルーム。
まるで海外のアパートメントのようなその空間に、
私はショートパンツとタンクトップで、足を組んで待っていた。

ピンポーン、と鳴ったドアの音。
開けると、現れたのはスーツ姿の男性。

「こんばんは。今日は、どうされましたか?」

その声が落ち着いていて、
“こちらのペースでいていい”と伝えてくれるのがわかった。

私は一拍置いてから、言った。

「……癒されたいけど、もっと正直に言うと、気持ちよくなりたいんです」

 

彼は驚かなかった。
むしろ、ごく自然に微笑んで頷いた。

「素敵ですね。
そうやって、自分の欲望にちゃんと向き合えるのって、
とても誠実なことですよ」

 

リビングに敷かれたラグの上に座ると、
彼は私の隣に腰を下ろした。

「肌、少し乾燥してますね。
お風呂は入りました?」

「さっき、シャワーだけ」

「じゃあ、オイルを使っても大丈夫ですか?」

私は、頷いた。
そして、その頷きが“セックスの許可”じゃなく、“自分へのご褒美”みたいに思えた。

 

オイルを乗せた手が、
脚の付け根をゆっくり撫でていく。
太ももが緩み、背中が反るたびに、
身体が“快感を受け取る準備”を整えていく。

「気持ちよさそうですね」

そのひとことが、
くすぐるように私の耳に入り込む。

私は、彼の手を自分の手で包みながら、
そっと引き寄せた。

「今日はね、ちょっと“お姫様扱い”してもらいたい気分なの」

「もちろんです。
あなたが“望む女”でいられるように、全力でエスコートします」

 

胸に触れる手。
服の上からでも、熱を持って伝わってくる指の動きに、
自然と、脚が絡まっていく。

「感じていい」って思えるって、
こんなにも心地よくて、
こんなにも自由なことだったんだ
――

 

彼の口元が、私の首筋を掠めたとき、
私は思わず、彼の耳元で囁いていた。

「私だけの時間にして。
ちゃんと、わたしを“女”として楽しませて」

 

その夜、私は
“癒される”だけじゃ物足りなかった。

“女として、快楽を味わい尽くす”ことに、
罪悪感も後ろめたさもなかった。

むしろ、
「これは、私だけの特権」
そんな風に思えるほど、自分に酔っていた。

 

男だけが、風俗で満たされてるなんて不公平。
私だって、今夜くらい――
“誰にも邪魔されないセックス”を、堂々と楽しみたかっただけ。

そして私は、
タンクトップの肩紐を静かにずらした。

“お姫様の夜”は、これからだった。